木原音瀬
書籍名:Home
出版社:オークラ出版 アイスノベルズ
内容:
篤25歳、直己10歳の時。直己は篤が片思いしていた男の姉の子供。その男が直己を育てていた。片思いの男は篤の双子の兄・隆と事実上の結婚をしたが、事故で2人とも死亡する。引き取り手のない直己を何の関係もない篤が引き取り育てはじめる。そして物語は篤33歳、直己18歳で始まります。
感想:
これだけでもかなりな内容です。通常のBLであれば序盤でいろいろ心の行き違いがあるけど、2人は最後にラブラブエッチで結ばれるはずです。確かに、2人は結ばれますが、これは辛い話です。
まず、篤も直己もそれぞれ意味が違うけど孤独です。直己は本当に天涯孤独の孤児同然、篤は愛されたがりのくせにはっきりと物事が言えない。ひがみ根性。優しいからとか、篤の親友の木原は言いましたが、違います。優柔不断で気が弱いからだと思うし、実際、最後に篤も自分の臆病さを反省します。彼の弱さを私も知っています。欲しいのに、欲しいと言えない。・・・私も同じ。例えば、私が篤だったら、多分同じように一生伊沢には告白できないだろうし、直己も引き取って育てると思います。
ただ一つ違うところは、直己が事故で外見が変化し、そのことで篤と不仲になった時、私が篤だったらきっと、何がそんなに気に食わないかぎりぎりのところで爆発するか、もしくは直己が家を出たあとで大後悔して、酒には走らずに直己のアパートを探してまわる。とにかく、篤の気持ちの流れが私と似てたので、なんだかイヤーな感じといいますか、同族嫌悪といいますか・・・になりました。
直己の生い立ちには涙が出ました。直己が篤の膝に甘えながら告白するところ。「涙が出るよぅぅ~~」ってもらしちゃいました。そして事故は・・・そこまでやるか~です。おまけに物語の最後に直己は自分の意思で顔まで・・・彼の健気さが愛しいし、悲しいし、でも、篤をあきらめられなかったことに、ちょっと安堵しました。
評価:C
エッチ度 ☆★★★★
感動度 ☆☆☆☆★
ワクワク度 ★★★★★
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書籍名:さようなら、と君は手を振った
出版社:オークラ出版
もし、『さようなら~』だけだったら癒されない切ない物語です。後記の『僕がどんなに君を好きか、君は知らない』があることで、私は救われました。
内容:
芦屋誠一は都会育ちの27歳。仕事はほどほどに頑張るが、目下、おしゃれに恋に多忙な毎日である。そこへ高校時代に肉体関係のあった田舎育ちで同じ年の従兄弟、氷見啓介が上京してくるという。空港で再会した啓介は誠一の感覚からすると桁外れにダサかった。そんなダサダサな啓介に嫌気を感じながらも彼の面倒を見、ダサさをぬぐったら綺麗な啓介と再び肉体関係を持つ。そのことと平行して、誠一は念願だった片思いの彼女マリと恋人関係になる。しかし、マリのおねだりはすさまじく、だんだん気持ちが白けていく。マリとのけりをつけたとき、啓介の姿はアパートにはなかった。
感想:
思うだけの愛のお話だそうです。啓介は与えるだけで、何も欲しがりません。ラストは題目通り、さよならです。BLには珍しいアンハッピーエンド。思うだけ・・・それで幸せ?同じ空の下で生きてる、それを感じるだけで幸せ?それって切ないです。
それから誠一の外見にこだわる主義は、そこまでこだわらない私にはよくわかんないなー。(でも、バッグにはこだわるけど)田舎住まいも私は卑下してないし、都会でも平気で訛りバリバリで話しちゃう。・・・オババだから?
『僕がどんなに~』は33歳の啓介視点で書かれています。アンハッピーエンドのその後です。こちらの方の誠一は27歳の時とうって変わって、ラブラブモードです。そのことが啓介の最大の不安となるのですが。性格的に、誠一はメジャー、啓介はマイナーだなぁ。啓介の思考回路、わからなくはないけど、先読みせず、現実をありのまま受け入れれば、もっと楽になるのになーって思いました。・・・それが難しいんだよね。ただ、ラストで誠一を選ぶ啓介に「それでいいんだよ」って思いました。子供と親の道は違うもの。(子供ナシ大人の無責任発言です)
評価:B
エッチ度 ☆☆☆★★
感動度 ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆☆★★
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書籍名:甘い生活
出版社:オークラ出版 アイスノベルズ
最初、この表紙の2人は誰だろうと思ったんです。受けは小学4年だし、ショタは嫌かも、と思いながら読み始めたのでした。
内容:
大学生の藤井清隆は片思いの男から家庭教師のバイトを頼まれる。相手は小学4年、不登校、全く喋らない、無表情の三宮文和。どうやっても反応のない文和にキレた藤井は文和を強姦する。その口止めの代償はコイン。その後、2人の関係は文和が中学になるまで続いた。その時文和の身長は藤井とほぼ同じ。藤井は垣間見る文和の暴挙が苦手だったし、育ってしまった少年には興味が失せ、バイトをやめると宣言する。そのことに反応した文和は・・・
感想:
そーいうことかい。ふ~ん。
「甘い生活」という題ですが、実際は甘くないです。でも、自分を好きなのだ、だからセックスするんだと信じている文和にとっては、例え藤井がどうであれ、甘いのかな。藤井にとっても、恋人もいないし、黙って抱かれる文和、その親からはバイト代を貰って、いいことばかり。わかりません。
毎度のことながら、木原さんの攻め男は最低なヤツが多いですが、今回ももれなくです。しかも今回は犯罪だし・・・でも私は藤井が嫌いになれませんでした。本人は自覚してなくても文和は家でも学校でも孤独で、そんな文和をどんな裏事情があったとしても抱きしめたのは藤井だけです。藤井は藤井で愛されたいと願いながら、愛してくれる男が現れません。最後には恋人だと思っていた男に暴力をふるわれます。そんな暴力男を文和はノシてしまうわけで、藤井は自分が恋人に育て上げた男の魅力にもっと早く気づくべき。
年齢差がネックだったのでしょうけど。
心に響いたのは「口唇エレジー」で「今までなにをするにも基準は『藤井』だった」という文です。「口唇~」は文和視点で書かれています。この行でいかに藤井が文和の人生そのものかを理解できます。若さというか、表情も言葉も少ない文和の唯一の情熱というか。文和がいじらしい。藤井が文和を好きだと言ってくれるまでに約8年かかります。それでも嬉しそうな文和。私的に言えば、刷り込みじゃないかなぁ。最初に抱きしめてくれたから、それを愛情と思い込み慕い続ける。
今回は文和くん、私のツボな男の子でした♪
評価:A
エッチ度 ☆☆☆★★
感動度 ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆☆☆★
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書籍名:恋愛時間
出版社:オークラ出版 アイス文庫
内容:
有田(29)は入社当時に面倒をみた2歳年下の後輩・広瀬に「好きです」と告白される。しかし、突然のことに驚き、また、実の弟が男と駆け落ちして両親が落胆しているのを知っている有田には、男が男を好きになる感情を受け入れることができない。広瀬の切ない視線にイライラした有田は広瀬を呼び出して苦情を言う。
とろくて仕事にも手間のかかる広瀬だが、誠実な彼の態度に次第に有田は胸がざわめく。
感想:
最初、有田はなんて男だと思ったんです。男が男を好きなることに対する拒絶がすごくって。まあ、弟が男と駆け落ちしたという過去があり、それであの拒否反応だとはわかるけど、普通だったら呼び出してまで苦情言うかな。とにかく、嫌な感じでした。
でも、それなのに広瀬を全く無視できない有田。広瀬の過去のエピソードを聞き笑ったり、彼の行きつけの店で広瀬のことを聞いたり、それが有田の気持ちをちょっとづつ開いていくのです。そして有田は誠実な広瀬にほだされちゃう。
ほだされちゃった有田も、元は嫌だと思っていたわけですから、気の毒といえば気の毒ですが、そんな風に拒絶されてもじっと我慢し、親切の押し売りをしないよう気遣って有田を攻略する広瀬って、けっこうすごいです。
『恋人時間』は広瀬視点のお話です。
こちらの物語で有田という人物を好きになれました。特に初エッチで「いや・・その」と言葉を呑むシーン。とまどいかと思いましたが、その真意があとからわかるのです。「抱かれるなんて予想外だったよ」って。
そうだよね。男同士で最初から受け攻めは決まってないし。
広瀬という人物像もつかめました。いけずされても自分の意見を言うことが出来るとか、後先考えず有田の元へ行ってしまう行動力とか。
『兄の恋人』は広瀬の弟視点なのですが、これがまた、広瀬の妹と弟で、2人を別れさせようと画策するのです。その時の有田もいい感じです。妹を広瀬の女と思い込んで、あっさりと「広瀬とは別れます」といいます。しかし、有田は映画館で映画を見ながら泣くのです。あっさりと別れると言ったのは、広瀬のことをおもったから。有田って情の厚い男だったんだ。
と、今回の物語は最初の印象と最後の印象が180度違う男の物語です。
・・・・なんかヘンな感想・・・
評価:B
エッチ度 ☆★★★★
感動度 ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆☆★★
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書籍名:Don't Worry Mama
出版社:ビブロス ビーボーイノベルズ
内容:
会社の出張で小さな無人島を訪れた東山裕一(25)の同行人は、チビでデブで性格も悪いうえにマザコンの上司・今蔵隆(30)。最悪なことにこの無人島に2人きりで取り残されてしまう。なじる今蔵に、最初は外面のいい裕一は我慢していたが、とうとうある日キレてしまう。しかし、再び2人で共同生活を始めたとき、裕一の感情は意外な方向に向いていた。
感想:
笑った。笑いまくった。
今蔵の書かれようといったら何でしょう。最悪で醜悪以外の何ものでもない。この今蔵と、ショタ好みの裕一が一体どうやって結ばれるのか、とっても疑問だったし、興味があった。
まず、この2人が島に取り残されてしまい、助けも来ない状況に陥るあたりが笑えた。じいさんの難聴に、しかもポックリで、会社は倒産だし、「何が何でも主人公はくっつくんだぞ」という作者の意思がうかがえた。・・・と言うか、そのような運命だったと言うか。
そんな2人が、なかなかお迎えが来ないことで最も心配する点の相違にも笑える。今蔵は食べ物、裕一は今蔵の貞操。その溝の深さが私のツボだったです。ハイ。
そして裕一が何かと理由をつけて今蔵に手を出すところや、趣味じゃないはずなのに、今蔵への傾倒が加速する裕一の心の変わりようがとっても自然なんだよね。短小に萌える裕一がすごい。
今蔵の可愛らしさも何なんでしょう?最初はあんなにヤなヤツなのに、皮むきしたあとの彼はめっちゃ可愛い。純粋だし、健気だし。あんなに陰険でうるさいデブが、可愛いデブに変身しちゃった。
「PRESENT」の今蔵はすっかり痩せちゃって、ますます可愛くなってるけど、おデブのままがよかったなぁ。痩せちゃった今蔵もそれはそれで良いけどね。おまけに一生懸命裕一に誕生日のプレゼントを模索するのが好感。
イラストの志水ゆきさん、デブ時代の今蔵は全身描けなかったのでしょうか。表紙の今蔵は裕一にしがみついてる。恥ずかしがってるのかな?友晴の前で「絶対に別れたくない」と言って泣く今蔵の絵が可愛いです。
評価:A
エッチ度 ☆☆☆☆★
感動度 ☆☆★★★
ワクワク度 ☆☆☆☆☆
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書籍名:B.L.T.
出版社:ビブロス BE-BOYノベルズ
内容:
大宮雄介は、5年前はサラリーマンだった。真面目に仕事をこなしていたが、当時中2だった北澤眞人に恋してから、彼の人生は変わってしまった。14も年の離れた少年に振り回される日々。それでもかまわなかった。だけど九州・宮崎で別れて、それでおしまい。
5年後、大宮は本屋の店長を勤めていた。偶然、北澤がバイトの面接に来る。関知しないことを条件に彼を採用した。しかし気になる。北澤も大宮のことを意識している。接近する2人。だが大宮にはすでに同居してる同姓の恋人がいた。不誠実な恋人だったが、彼は大宮の別れの言葉に激怒し自殺騒動まで起こす・・・
感想:
表紙の絵もその後のイラストも、北澤がすごく若かったので、中2の少年とラブラブなお話で、その結果主人公は破滅していくお話だろうか、とイメージしていた。だけど北澤が中2の頃にはキスくらいで、実際エッチするのは19歳だった。この北澤、可愛らしいというか、男前というか、素直というか。純粋培養のような少年だと思う。だけどしたたかな面も持っている。すごく魅力的な少年だった。
反対に大宮は、汚い。この言葉しか浮かばないなぁ。真面目であるし、思いやりもあるし、やさしい。でも自己中心なのは否めない。
ま、北澤との出会いのタイミングが非常に悪かった、というのもあるけど。でも、北澤が言ったとおり、中2の時に出会って互いのことを認知し、いったん別れて再会する、という順序は、北澤が大人になるステップためには必要不可欠だったと思える。だとすれば、そんな彼を5年の間で諦めてしまい、他人の恋人だった千博を横取りした大宮がちょっと赦せんなぁ。
ストーカーまがいに狂ってしまった千博だってすごく気の毒だった。大宮は、殺してしまおうという憎しみの感情を引き出してしまう千博が憎たらしい、と言ったけど、でもそのように追い込んだのは他でもない、大宮なんだ。確かに千博に狂言自殺されたり5分おきの電話掛けられたりで、かなりヘビーだっただろうけど、そんな風にしてしまった大宮の自己中心的な行動にも原因があるのだから、どっちもどっち、と思った。ついでに言うと、大宮と北澤の関係が深くなりラブ度がアップすればするほど、読者の私も千博をうっとうしく思ってしまった。うう・・・そんな・・・
おまけに大宮は嘘をつく。彼の言葉をそのまま信じた北澤も、騙され続ける千博も、むしゃくしゃするほどお気の毒。結局は千博のことを解決できずに、大宮は幸せ絶頂な北澤に唐突に別れ宣言をする。
この段階で、「ああ・・・木原さんだよ・・・」って納得してしまった。そうだろう、この展開だろう・・などど妙に感心したというか。
でも、高野という千博の元カレが北澤に、大宮がついた嘘の真実を教えてくれる。北澤は本当のことを知り、自分の中でそのことを消化して、そして大宮を待つことを決める。高野という男性の懐の大きさに大宮は救われ、北澤の純粋さに救われる。未来志向の終わり方にものすごく安心した。
「オレが一番だよ、ずっと忘れんなよ」この言葉がすごくよかった。
評価:A
エッチ度 ☆☆☆★★
感動度 ☆☆☆☆☆
ワクワク度 ☆☆☆☆☆
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書籍名:脱がない男(上)
出版社:ビブロス ビーボーイノベルズ
内容:
甲斐谷安和(かいたにあんな)は大手化粧品会社に入社して3年目だが、仕事に遅刻するし、仕事もさっぱりだ。現在男性専用化粧水の新製品の開発プロジェクトチームに、上司である藤原康人と共に参加している。商品化の決定権はこの藤原に一任されている。藤原は美しい容貌とアンニュイな雰囲気を持ち、上から下まで一糸乱れない。仕事もデキる男で、リサーチの結果を重要視する藤原と、センスのない甲斐谷ではまったく畑違い。互いに犬猿の中で、意見も対立する。
藤原は要望に比例するように女性関係も派手である。その藤原が「エッチの最中も服を脱がない」という噂を聞いた。おりしも意見対立で、どうしても自分の意見を通したい甲斐谷は、ある作戦のために藤原を泥酔させ、彼のマンションを訪れた。
感想:
この作品の前作である「Don’t worry mama」の内容を忘れちゃったので、まずはそちらを読んだ。その中に甲斐谷と藤原は少しだけ登場していた。
本編を読んで、藤原が「ヤナヤツだなー」と思い始め、「いや、こんな男だけど、甲斐谷とくっつく予定だから(多分)甲斐谷のことを認めてるのかも」などといろいろ考えたのだけど、やっぱヤナヤツで。
そう思っていたら、甲斐谷の方がもっとヤナ男になった。
ところが、そこからが可笑しい。可笑しすぎ。笑った笑った。
なんで好きでもない男の半ケツ状態を写真撮影したり、裸を前に真剣に悩む甲斐谷。まずそこで笑った。
藤原の2枚目からの転落も可笑しかったし、SMプレイと勘違いする東山も笑った。多分、この東山の勘違いがクセモノだったのね。彼の勘違いがなければこんなに発展しなかったんだもの。
それから、東山のカミングアウトに驚くひし形口の甲斐谷も笑える。
そして、好きでもない男の一人エッチを手助けしたり、最後の果てに誘惑されたり。
久々に本読んで爆笑しました。
甲斐谷、ヘンだ。
藤原は、お気の毒だと思う。ま、慇懃でやな上司ですが。本当はカッコいい上司なはずなのに。
ヨゴレ甲斐谷に弱み握られて、あーすっきり、と思う気持ちと、普通の気障男だったのに、甲斐谷のヨコシマなやる気と、東山の勘違いと、友晴のおせっかいに翻弄され、しかも初エッチしたと気付かないなんて、こんな受け、見たことないなぁ。
下巻、楽しみです。早く読みたいな。
評価:B
エッチ度 ☆☆☆★★
感動度 ☆☆★★★
ワクワク度 ☆☆☆☆☆
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書籍名:脱がない男(下)
出版社:ビブロス ビーボーイノベルズ
内容:
新しい男性向け化粧品の商品化に向け戦略を練る甲斐谷だったが新たな課題に思考がストップしていた。しかし課長の藤原の助言を得て、再びやる気になり仕事に励む。以前はいけ好かなかった藤原だったが、クールの下に隠された思いやりと初エッチ(藤原は知らない)の時の壮絶な色気に、甲斐谷は惹かれる。おまけに藤原が片タマであることをからかっていた学生時代の同級生に偶然出会い、弱い藤原を知り、ますます惹かれる。どうしようか悩み藤原のマンションの前に佇んでいると、女の子連れの藤原が帰ってきた。甲斐谷のために女の子を帰し、自宅へ招待する藤原に、誰とは明かさず恋の相談をする。そしてついに自分の想いをぶつけるのだった。
感想:
脱がない男(上)の下巻です。(上)では甲斐谷も藤原もそれぞれの立場があって、笑えるけど好きになれる要素があんまりなかった。でも今回は「この人たち、いいなぁ」と思える要素がふんだんに入っていた。
片タマをいじめの対象にされた藤原の学生時代。しかもそれは高校まで続いたのだから、そうとうプライドは傷つけられただろう。いじめを受けた精神的外傷は時間が経過しても忘れられるものではない。田上に片タマを貶された藤原が自宅で泣くシーンに、私もグスン、ときてたら、甲斐谷~~そこで全裸になるか?半泣きで爆笑でした。ヌードを公開しろと迫るその思考、わからんです。
でもそれだけ藤原のことが好きでたまらないんだねぇ。
甲斐谷って悪いやつだとは思わないんだけど、藤原とエッチに関してはずるい男だ。たいてい片タマを逆手に取ってる。藤原がお気の毒。甲斐谷の必死の懇願が効いたのかな。懇願して脅してエッチか。
それでもラブラブになるのだから、人間の思考なんておもしろい。
そしてラスト近く、藤原に対するメス発言。あれはイヤな感じだったなぁ、甲斐谷。でもそんな甲斐谷の思考を読んでいた藤原はさすが。
しかしあの残りページ数でこの展開、実は私、少々心配になったんだ。木原さんのことだから、もしかしてこのまま別れのジエンドかと思ったのですが、普通の展開でよかった。だって甲斐谷、憎めないんだよね。
藤原さんの最初の印象と最後の印象、180度違っちゃいました。最初は「・・・これが受けさん?」って感じだったけど、「エロエロ光線きつ~」に変化しました。ボイスで聞きたいなぁ(聞いたら暴れるな)。
特に藤原の場合、わりとマイナス思考で、片タマのいじめを克服するために自己研鑽に励み一生懸命努力する、けどやっぱり克服できない深い悲しみを持ってるところとか、甲斐谷とのエッチに感じる自分を「変態になってしまった」と思う思考のところが好き。本当はものすごく繊細で弱いんだね。だからこそ甲斐谷のような厚かましいヤツに強引に攻められるのがいいんだね。
今回は東山と今蔵のツーショットが拝めるかと思っていたけど、なかったのが少々淋しいです。
表紙がさわやかエロですね。パンツ見えてるし。
評価:A
エッチ度 ☆☆☆☆★
感動度 ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆☆☆☆
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書籍名:セカンド・セレナーデFull com
出版社:ビブロス b-BOYノベルズ
内容:
<明智琢磨編>「水のナイフ」
高校時代、自分達の担任でもないのに全てにおいて一生懸命な男性教師がいた。数学教師の砂原は、背が小さく顔も決してハンサムではない。むしろその反対。明智の興味は、他の学生にも人気のあった女子の大友さんだった。しかしその大友さんは、どうやら砂原に気があるらしい。砂原を大友さんから遠ざけるために明知はある画策を行なう。明智はその気もないのに砂原に告白する。文化祭のためにクラスで映画を撮影することになり、そのことを通して砂原とも大友さんとも距離が縮まり、明智の思い通りになっていくが・・・
<掛川進編>「セカンドセレナーデ」
高校時代、好きだった数学教師に失恋した。教師は当時掛川と仲良かった男と付き合っていると言う。ショックを受けた掛川は、バーで知り合った男に、好きでもないのに一目惚れしたと告白する。橋本道也は超タカビーな男で、それでも体だけの恋人とはまあまあうまくいっていた。
その橋本が結婚するという。あっさりと切り捨てられる掛川。しかし橋本の結婚が頓挫になり、橋本が駆け込んできた場所は掛川のアパートだった。
感想:
木原さんが書く男達は最初は下衆野郎が多い。まったくもって明智も掛川も橋本も最悪の男だった。唯一、好感度高かったのは砂原。顔はブスでも性格は最高に良い。
表題は「セカンドセレナーデ」となっているので主人公は掛川なのだろう。だけど私がもっとも好きな作品は「水のナイフ」である。明智が大友さんを手に入れたいあまりに砂原に告白する。その時点で「ああ、木原さんだね・・・」なんて思った。
大友さんを好きなのに、次第に砂原へ傾倒していく過程がすごくよかった。私も砂原の良さが理解できた。一番好きだな、と思ったところは、ジタバタしないところ。捨てられるとわかっていても、それをあえて受理する男気と潔さ。こんな受け、最高。だからこそ明智は砂原から逃れられないのだろう。
これは私の中では「A」評価なのだけど・・・
本編であるはずの「セカンドセレナーデ」になると、ガクンとなった。「水のナイフ」では砂原に片思いする掛川の存在はけっこう好感度高かった。それなのに、彼が主人公になると、何故か好きでもない男に一目惚れをしたと言ってウソをつき、心の中では橋本を侮蔑する。まあ、橋本もいい人間ではないのでしかたないけど、そこでちょっとガッカリした。掛川にイメージが崩れたのだ。それはいい意味で筆者の計算だったかもしれない。
だからそこ、最後には主人公達を好きになれるものが欲しかった。
だけど、好きになれなかったんだよね。
まず、あんなに砂原が好きだったのに、体の関係からいつしか人間的なドロドロとした一面を見て、橋本が好きになっていく。その感情の流れが、私には唐突だったのだ。
あれ?さっきまで砂原が好きだったじゃない、って思った。橋本のどこに惚れたのよ、いつの間に?という具合。
橋本は最後までタカビーで、それを貫き通してくれたのは嬉しかった。しかも挫折して、ドロドロの人間性を見せてくれたのも、どちらかというと好感。しかし、好きではないけどね。こういう男を好きになってしまう掛川のことを書きたかったのだろうけど。
どうも、好きの瞬間がわからなくて、気持ちがリンクできなくて、それで終わった。
私の中では「C」評価です。
それで総合して「B」評価になってしまった。
評価:(総合)B
エッチ度 ☆★★★★
感動度 ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆☆☆★
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書籍名:あいの、うた
出版社:蒼竜社 ホリーノベルズ
内容:
<あいの、うた>
小菅博近、職業音楽エディター。アングラやインディーズのミュージシャンを主体に扱う音楽雑誌『move』の3年目編集者である。最近やっと自分のインタビュースタイルが確立した。
ある日、編集長が病気でダウンし、そのピンチヒッターで小菅はSCUAの写真撮影に付き合った。彼らの音楽を編集長は絶賛するが、小菅は嫌いだった。本音を語ったら、ボーカルの久保山明人に蹴られた。SCUAの曲のほとんどが久保山の作品で、彼のこだわりでミキシングされている。小菅は彼らの音楽のどこが嫌いなのか、見つけるためにSCUAライブへ行った。何度も行くうちにリーダーと仲良しになり、妻子あるのに惹かれた。しかしリーダーの世界にはホモは存在していない。諦めた。売れない久保山は極貧生活を送っている。ひょんなことから小菅は久保山をアパートへ連れ帰り、それ以来ちょくちょく来るようになった。CDは泣かず飛ばずの状態で、SCUAの事務所との契約が切れることを知った小菅は、彼らのために奔走する。おかげで契約が取れたが、今度は『move』が廃刊となった。そして小菅は自分の本当の気持ちを知る。
<The end of youth>
田頭眞一は高校時代、同級生の弟・小日向大に付きまとわれた。自分の気持ちに一途で、ウソをつかない変わり者の大。最初は嫌がりながらも次第に好感を抱き、キスもした。その頃田頭たちは『move』というバンドを組んで、高校最後の記念にアマチュアバンドのコンテストに出場した。その時なぜか田頭だけがスカウトされ、高校卒業を待ってアイドルバンドでデビューした。大に付きまとわれ半分辟易していた田頭は、上京と同時に大を切り捨てた。
田頭のバンドは最初は売れたが、それ以降ヒット曲に恵まれず、それでもミュージシャンの夢を諦めきれない田頭は少ない仕事をこなしていた。そんなころ高校時代にバンドを組んでいた大の兄と再会する。そして大との再会。冷たい視線に田頭は退散する。
起死回生で創った曲をゴーストライターとしてしか起用されなかった田頭は、音楽にけりをつける。田頭が向かったのは大のいる居酒屋のまえだった。
感想:
青春群像っていえば、なんだか古臭いし、NHKみたいだし、うーん、って唸るけど、青春群像物語という言葉がピッタリ。
2組のカップルがくっつくまでというBL的スタイルはそのままだけど、そこまでの過程はBLでなくても読めるものだった。ただし、アングラな話なので、BLによくありがちな金持ち攻めと貧乏受けが出会ってしあわせ、とか、バリバリできるサラリーマンとか、可愛い男の子などを期待したら鼻をくじかれる。
2作に共通するのは売れないミュージシャンの苦悩と、move。
アーティストはナルシストだと思う。音楽に自分のオリジナリティと自己満足を詰め込まなければ自分らしいものは出来上がらないから。だけど、それが売れなければ話にならないのだ。昔、佐野元春が言った「音楽は売れなきゃダメなんだ」って言葉が私には衝撃だった。自分が「売れる」と思って創っても、受け手に聴きいれてもらえなかったら、それは駄作にしかならないし、淘汰されていく。受け手に媚びるのではない、彼らを負かすというか、ついて来させるパワーやカリスマ性、それから運を、才能とかいうのかな。
これはそれがなかった人々のお話である。
BL的な展開ならば、「あいの、うた」で久保山がボクサーのために創った曲は、ヒットするはずだった。しかし、しない。最初は発売すらされないんだもん。これが多分、木原節なんだよね。あとで発売だけされることになって、ホッとした。
「The end of youth」は雑誌『move』の編集長である田頭の若かりし頃のお話である。あの編集長さん、こんな過去を背負ってたのね。ヘビーだ。
大のストレートな感情もとんでもなくヘビーだった。実際にこんな男がおったら、おしつけがましく感じるかも。真実しか言わない、というのがものすごく辛い。嘘つきじゃないことはいいことだと思うけど、全身全霊、全ての感情が自分に向かっていたら、正直腰が引けるもの。
19歳が最高の時だった、って後で知る田頭なんだけど。これはもう、いまだってアイドルとかバンド活動してる人とか、身にしみるかも、きっと。
ミュージシャンとしてなんとか生きていこうとジタバタする姿が、痛いというか、人生のときというか。「何とか、何とか」と暗中模索する姿は、多分、10年前の私だったら好きなお話にはなりえなかったなぁ。どろくさくて。
ラストで大が田頭をそれでも、「愛してる」って言うのがすごく救いだった。
評価:A
エッチ度 ☆★★★★
感動度 ☆☆☆☆☆
ワクワク度 ☆☆☆★★
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